Drink Me & Eat Me Online(Spring, 2023)

これは日本ルイス・キャロル協会のニューズレターThe Looking-Glass Letterを補完するために設けられたページで、会員以外には非公開です。

【会員のニュース】Members' Activities

■『芥川龍之介・菊池寛共訳 完全版 アリス物語』発刊
1927年刊行の芥川龍之介・菊池寛共訳『アリス物語』に、会員の澤西祐典さんが脱落箇所を補訳し、注釈・解説を加えた完全版が2月8日に発売になった(グラフィック社、1,980円)。38ページにおよぶ注釈は、単なる原作の訳注ではなく、芥川と菊池がこの『不思議の国のアリス』に向き合っている様が思い浮かぶような文章であり、読み甲斐がある。マーガレット・タラントのカラー・イラストはかわいらしい。編集担当は会員の橋本彩乃さん。
(佐藤正明)
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■Selwyn Goodacreさんの著書紹介
海外会員のDr Selwyn Goodacreの最近の著作を紹介します。
Serendipity: The Selected Writings of Selwyn Goodacre (2022)
過去40年間に亘って発表されてきたアリスの本のテキストの研究や医者としての観点からキャロルの病気などに触れたエッセイ集。ビアトリクス・ポッターや他の作家についてなど様々な話題についても書かれています。
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Reflecting Alice: A Textual Commentary on Through the Looking-Glass (2021)
『鏡の国のアリス』を子供むけの物語として捉えて注釈がついています。物語のテキストを一行一行調べることによって理解できる深さと機微、Selwynの物語への愛情がうかがわれます。以前、著者からアリスの本は毎回読むたびに新しい発見があると聞いたことがあります。アリスの物語を深読みしすぎていると思える解説本がある中、物語の原点に返った注釈書と言えるでしょう。
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この本を手に取り、四半世紀前にご自宅を訪ね、コレクションを見せていただき、手料理の朝食をごちそうになったことを懐かしく思いだしました。
2015年に出版された下記の本も是非合わせて読んでいただきたいと思います。キャロルの研究家にとって必携の本です。
Elucidating Alice: A Textual Commentary on Alice's Adventures in Wonderland (2015)
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(門馬義幸)

■安井稔・安井泉著『英文法総覧 大改訂新版』発刊
安井会長が、お父上・安井稔氏の著書『英文法総覧 改訂版』(1996)を大改訂して約1.8倍の大部になった『英文法総覧 大改訂新版』(開拓社、7,260円、858ページ)が2022年10月に上梓された。文学作品からの引用もあり、『不思議の国のアリス』から24か所、『鏡の国のアリス』から7か所引用されている。
(佐藤正明)
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■Pelianoさんの新刊Alice Quebra Cabeça
海外会員のAdriana Pelianoさん(ブラジル ルイスキャロル協会会長)の新刊です。Jorge Dutra Freitasさんとの共著です。
  Alice Quebra Cabeça (Alice Puzzle) by Adriana Peliano and Jorge Dutra Freitas
Lewis Carroll Society of Brazilが昨年(2022年)発行した絵本です。21p×21pの大きさで、42ページ。限定100部発行されました。
The story has no words, is a imaginative retelling of AIW by a child playing with a puzzle including her own pieces.と紹介されています。
(門馬義幸)
著者が5歳の甥と『アリス』の話をしながら、タングラムというパズルを翻案した様々な形のピースを用いて『不思議の国のアリス』を描いた、全く字がない絵本です。キャロルはゲームをするだけでなく作ってもいました。中国の伝説から発生したタングラムも楽しんだに違いないと作者は推測しています。本の題は「Alice Puzzle」ですが、braking the headという二重の意味があるそうです。私は以前子供たちと行った旅の宿に置いてあったこのようなパズルで、お手本の図柄を見ながらあれこれ頭をひねって挑戦したことを思いだしました。
(木場田由利子)

【公演】Performances

■野田地図(NODA・MAP)の新作舞台
野田地図(NODA・MAP)の新作舞台にはアリスが登場するそうです。タイトルは『兎、波を走る』。6月から東京・大阪・博多で公演があります。
野田秀樹の芝居には言葉遊びが欠かせません。なにがどうアリスと繋がるか楽しみな舞台です。詳細や本人のコメントは公式サイトからご確認ください。
▼公演の詳細
NODA・MAP第26回公演『兎、波を走る』
作・演出:野田秀樹
キャスト:高橋一生 松たか子 多部未華子 秋山菜津子 大倉孝二 大鶴佐助 山崎一 野田秀樹

大阪・福岡は5/22正午(東京は4/10)までの会員登録で一般発売に先駆けたチケット先行予約が可能です。
(戸苅康子)
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■ふぉーすてーじリーディングライブ12月公演「鏡の国のアリス」(2022年12月)
カフェバーの舞台で声優たちが朗読。
脚色・演出:あさかりょう
場所:リーディングカフェバーg LUV.(じーらぶ、) 東京都中野区・中野駅南口より徒歩5分
上演日時:Rook/Knightで出演者がかわります。
    【Rook】12/15(木)15:00/19:00、12/17(土)13:00/16:00/19:00
    【Knight】12/23(金)15:00/19:00、12/26(日)13:00/16:00/19:00
料金:3,000円-(ワンドリンクつき・全席自由席)
(栗田研)
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【出版物】New Books and Old Books

■小学館世界J文学館『不思議の国のアリス』Kindle版
2022年11月に発行された紙版の『小学館世界J文学館』(小学館、5,500円)は125冊の作品のあらすじが掲載された文学全集で、本文はWeb経由のストリーミングで読むシステムになっており、ダウンロードはできない。この全集に収録されている田中亜希子訳『不思議の国のアリス』がKindle版(小学館、880円)の電子書籍で12月23日に発売。Amazon Kindleを持っているか、PCやスマホにKindleアプリをインストールしていれば読むことができる。
(佐藤正明)
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■『音声DL BOOK『不思議の国のアリス』で深める英文解釈12講:「ナンセンスの王国」に英文法で迫る』(NHK出版)
標記書籍が2023年2月14日にNHK出版から刊行(勝田悠紀著、256ページ、2,090円)。原作の各章ごとにイラストレーターはしゃによるコミック形式の6ページのあらすじがあり、そのあとに著者が原文を引用して、文法的な解釈を加えている。購入すると本書の音声をNHK出版サイトからダウンロードできる。
(佐藤正明)
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■『名画のティータイム: 拡大でみる60の紅茶文化事典』
『不思議の国のアリス』の最後で、アリスがお姉さんに「もうお茶の時間よ。急いで行きなさい。遅れてしまうわ」と言われる場面がある。なぜお姉さんはいっしょにお茶に行かなかったのだろうか。その答えが、Cha Tea 紅茶教室著の『名画のティータイム: 拡大でみる60の紅茶文化事典』(創元社、2022、3,520円、256p)のp.184にある。ここでは「上流階級の家庭では、子供は両親と食事を共にすることはなかった。(中略)子供の夕食は「ティーミール」を略して「ティー」とも呼ばれた。キャロル作の『不思議の国のアリス』のラストシーンは、夕刻アリスが不思議の国の夢から目覚め、お茶をしに家路を急ぐシーンで終わる。もちろんこのお茶は夕食のことだ。」と説明されている。さらに詳しい英国文化の背景はこの本の「ナーサリーティー」の項を参照のこと。
(佐藤正明)
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■「アリス夢物語(「不思議の国のアリス」ふう)」
『古本海ねこ 古書目録』(No.17 December 2022)に掲載の「B-43 子供の家 第5巻第3号 大正15年3月、55,000円」の収載作品に、「アリス夢物語(「不思議の国のアリス」ふう)」がありました。私の予算では購入できません。
(門馬義幸)

■アニメ「アリスとふしぎのくにのベーカリー」
有料放送ディズニー・チャンネル(BS256)でアニメ「アリスとふしぎのくにのベーカリー」を放送中です。映画「ふしぎの国のアリス」にインスピレーションを受けたアニメーションシリーズで、ひいおばあさんの魔法がかかった料理本を譲り受け、「ふしぎのくにのベーカリー」でお菓子やパン作りに奮闘するアリス。親友の白ウサギのファーギー、おかしな友達のハッティ、ハートのプリンセスのローサなど仲間たちと一緒に、食べ物は自分を表現することができ、友だちや家族を結びつける力があることを学びます。
ディズニー・チャンネルへリンク
この「アリスとふしぎのくにのベーカリー」の本が出ています

(門馬義幸、佐藤正明)

■韓国の人気イラストレーター キム・ミンジ(Kim Min-Ji)挿絵のアリス
韓国の「INDIGO社」が刊行している韓国語版「美しい古典シリーズ」でキム・ミンジ挿絵のシリーズ3『ふしぎの国のアリス』(2008年)とシリーズ23『鏡の国のアリス』(2015年)がハードカバーで出ている。同じ装丁の英語版も出ている。キム・ミンジの挿絵は英米のイラストレーターでは決して描けないかわいらしさがあり、評判が高いようだ。 国内ではYAHOOに出店している「にゃんたろうず」が主に取り扱っている(にゃんたろうず キム・ミンジで検索)。アマゾンでの取り扱いもある。
このほか、ソフトカバーで判型が大きい(A5判)中国語版『ふしぎの国のアリス』愛麗絲夢遊仙境も、キム・ミンジ(金a志)挿絵で台湾の「核心文化事業有限公司」から2010年に出版されている。挿絵のレイアウトが韓国語版とはかなり異なっている。国内での入手はちょっと難しい。
(佐藤正明)

■イラストレーター・マツオヒロミのアリス画
『不思議の国のアリス ミステリーアンソロジー/アリス殺人事件』(河出文庫、2016)の表紙画でセクシーなアリス像を描いたマツオヒロミさんは、ドール専門誌「Dollybird vol.14/ALICE特集」(ホビージャパン、2010)でも、表紙画と『不思議の国のアリス』のキャラクター解説のカットを描いている。このカットは残念なことに絵のサイズが小さいが、『ILLUSTRATION MAKING & VISUAL BOOK マツオヒロミ』(翔泳社、2016、2,750円)では同じ絵がそれぞれ1ページ大で掲載されている(pp.152-156)。最近発刊になった『マツオヒロミ作品集 万華鏡の庭』(玄光社、2,860円)には上記河出文庫の表紙画が1ページ大で掲載されている(p.54)。
(佐藤正明)
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【催し】Events

■ヒグチユウコ展「CIRCUS」(2/3〜4/10)
ヒグチユウコさんの作品についてはこれまで、ニューズレターNo.113(Autumn, 2011)の新宿マルイワンの「アリス展」やNo.155(Spring, 2022)のディズニーストアのグッズ、No.158(Winter, 2023)の『月刊MOE』定期購読者向けアリス・トートバッグなどでたびたび紹介されてきた。そのヒグチさんはヒグチユウコ展「CIRCUS」を2019年1月の東京会場(世田谷文学館)を皮切りに全国9会場を巡回してきたが、今回、「CIRCUS FINAL END」として東京で再び開催。森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)で、2月3日〜4月10日まで。
(栗田研)
ヒグチユウコ展へリンク

■オンライン講演「『不思議の国のアリス&鏡の国のアリス』新訳版に込めた、7つの仕掛け」
日本映像翻訳アカデミー(JVTA)開校25周年記念の標記特別講演がオンライン(Zoom)で開催。
  日時:2月6日(月)19:00〜20:30
  講師:小松原宏子(静山社刊『不思議の国のアリス&鏡の国のアリス』訳者)
  料金:無料
  申込:下記サイトの申込フォームから申し込み。
(門馬義幸さんがみわ書房さんからお聞きした情報です)
JVTAへリンク

■古今東西雑貨店イリアスで水野真帆ミニ展示「童話雑貨店」開催
東京・谷中の古今東西雑貨店「イリアス」さんで、水野真帆ミニ展示「童話雑貨店」が開催(1月26日〜2月7日)。水野さんのアリスの新作も多数展示されていました。
(門馬義幸)
イリアスへリンク

■ショッピングモールでアリスのイベント開催
鏡の迷路と宝探しを組み合わせたイベント「ミラーメイズ〜鏡の国のアリス〜」が2010年8月から(株)ワックにより各地のショッピングモールで開かれている(最近ではイオンモールのむさし村山や上尾で)。開催期間は2、3日。Googleで検索すると「鏡の反射を利用した、どこまでも続く不思議な迷路! 迷路の最後にある宝の部屋で、入り口で持った宝と同じ重さの宝を見つける事が……」とある。
(栗田研)

■京成バラ園にアリスのエリアが登場!
やちよ京成バラ園に『不思議の国のアリス』をテーマにした新エリアとアトラクションが設けられるそうです。開催期間は4月21日〜6月11日の土日祝(GW中の5/3-5/5は開園)。薔薇の見頃は5月中旬〜6月上旬頃。詳しくは公式サイトを確認してください。
(鳥集あすか)
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■ハンドメイドマーケット「不思議の国のアリス×スチームパンク〜アリスと歯車6」開催
ハンドメイドマーケット「アリスと歯車」の第6回が以下のように開催される。
  日時:5月27日(土)、28日(日)
  会場:大阪市立旭区民センター
アリスと歯車6へリンク
(栗田研)

このイベントの背景について説明します。
「スチームパンク」は、サイエンスフィクションの新しいサブジャンルとして1980年代に成立した「サイバーパンク」をもじって1980年代後半にできた用語で、基本は、ヴィクトリア朝やエドワード朝を舞台に、蒸気機関や歯車などのテクノロジーから高度に発展したコンピューターや乗り物にあふれる世界を描いています。代表作としてジェイムズ・P・ブレイロック『リバイアサン』(1984)、『ホムンクルス』(1986)やウィリアム・ギブスン&ブルース・スターリング『ディファレンス・エンジン』(1990)などがあり、アニメ『天空の城ラピュタ』や『スチームボーイ』もこのジャンルに属しています。
このスチームパンクのアイコンとしてよく登場するのが、詩人バイロンの娘にして世界初のプログラマーの女性エイダで、上記の『ディファレンス・エンジン』や山田正紀の『エイダ』(1994)などにも登場しています。そしてもうひとり、ルイス・キャロルがコンピュータ開発者チャールズ・バベッジの工房を訪問したこともあって(1867.1.24)、アリスもスチームパンクのアイコンとして登場すること多く、Wol-vriey著Alice's Adventures in Steamland: The Clockwork Goddess(2012)など多数の作品があります。
スチームパンクはこうしたフィクションの世界から、グッズ、フィギュアやコスプレのジャンルへと広がっていき、日本でもスチームパンク・ファンが自作のグッズを販売するイベント「アリスと歯車」が2016年から4回開催されています(第5回は新型コロナウイルス対策で中止)。そして今年5月に第6回が開催されことになりました。このイベントにはスチームパンク・コスプレの参加者も多いようです。
下記動画では、スチームパンクについて詳しく解説しています。興味ある方はぜひご覧ください。
YouTubeへリンク
(佐藤正明)

【その他】Others

■ラーメン「不思議の国のアリス」
アリスのラーメン情報です。渋谷駅から徒歩7分のところにある、鶏系ラーメンの店『吉法師』ではバレンタイン限定「不思議の国のアリス」(1,200円)というメニューがありました(2月19日終了)。水色のスープに、チョコレートやホイップクリームや苺が入っています。以下のサイトに食レポがあります。不味そうな見た目ですが、味は悪くなかったようです。
(栗田研)
東京ラーメンタルのサイトへリンク

■海老せんべい詰め合わせ「ハートの国のアリス」
海老せんべいの老舗店「桂新堂」から詰め合わせ「ハートの国のアリス(40枚入)」(1,620円)が発売されている。物語のリーフレット付。全国大手百貨店のほか通販でも販売。(現在は販売終了)
(古今東西雑貨店イリアスさんから情報をいただきました)
桂新堂へリンク

■『不思議の国のアリス症候群』は、原作者の体験に基づく物語?
不思議の国のアリス症候群に関するネット記事です。自分の体の一部が大きく、または小さく感じたり、もしくは時間が実際よりも早く過ぎ去っているような、そんな体験をするような症候群ですが、これは原作者の体験に基づいたものかもしれないということが書かれています。
(栗田研)
YAHOOニュースへリンク

■聖マークス教会の焼失
A fire last night destroyed St Mark’s Church at Hamilton Terrace, St John’s Wood, London. This was the church at which Robinson Duckworth was vicar, 1870 to 1906. I don’t have any reason to believe CLD visited the church, but it is possible. There was a painting of Duckworth in the church and other references to him.
Perhaps this is too peripheral to be of interest to Knight Letter, Bandersnatch, Phlizz or Looking-Glass Letter readers, you decide - but particularly sad as it is close to where we live and we have taken a few Carrollians there over the years. Curiously, we lived in the area for about 15 years before we knew of the Duckworth connection, which was pointed out to us by Clare and August Imholtz.
(27th January, Mark Richards)

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